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朝日新聞 11月29日付け論説委員の記事です [家]

朝日新聞 2009年11月29日(日) 記者の視点 朝日新聞論説委員 野呂 雅之
      『伝統木造構法  匠の知恵生かす設計法作れ』
 「伝統木造構法」という家の建て方をご存じだろうか。
 地震列島で大工や左官が培ってきた技によって、地震力をやりすごす柔構造に工夫が凝らされている。柱と横材でジャングルジムのような立体格子をつくり、地震の力をその構造の中に受け入れ、揺れながら分散して吸収する。
 この構法で最も重要な特徴が「石場建て」だ。木造住宅メーカーの大半が採っている在来軸組構法は柱脚を基礎に固定し、揺らさないように造る。一方、石場建ては石の基礎の上に柱脚を置くだけで、予想を超える激震に襲われたら、柱脚がずれたり浮き上がったりして地震力が地盤から建物に伝わるのを遮る。
 自然には勝てないとの考えに立ち、匠の知恵を生かして、住む人の命を守ろうというのが伝統構法である。
 だが、戦後できた建築基準法の枠組みに伝統構法は入らず、大工棟梁たちが細々と家づくりをしてきた。さらに2年前、耐震偽装事件をきっかけに基準法が改正され、高層ビル並みの厳しい基準が求められるようになった。このままでは廃れてしまうという棟梁らの声を受けて、国土交通省は08年度から伝統構法の設計法づくりを進めている。
 ところが、肝心の石場建てによる設計法が見捨てられそうになってきた。その問題が19日の参議院国土交通委員会で取り上げられ、質問した西田実仁委員によると経緯はこうである。
 設計法の検討委員会が設けられ、大学や独立行政法人の研究者のほか、大工や建築士も加わった。実務者の意見を反映させるのが目的なのだが、その意見が生かされているとは到底言い難い。
 実物大の住宅を振動台で揺らす実験では、実務者の求める石場建ては実施されず、研究者主導で柱脚を基礎に固定したケースしか行っていない。設計法づくりには実験が欠かせないため、当初から石場建ての設計法などつくる気がなかったとしか思えない。西田委員はそう指摘する。
 検討委員会の委員長は伝統構法に批判的な学者が務め、石場建てに後ろ向きな研究者らが委員会を主導している。国会で答弁に立った馬淵澄夫国土交通副大臣は「構成メンバーに問題があり、中立的なバランスをもってすべきだ。検討委員会をしっかり見直す必要がある」と明言した。
 国土省がなぜ、そのような人選をしたのか理解できない。検討委員会の事務局に住宅メーカーの社員がいるのも公平性の観点から疑問だ。石場建てを望む大工たちの意見に耳を貸さず、住宅メーカーに使い勝手のいい設計法をつくるとでもいうのだろうか。
 検討委員会のメンバーを見直すのにとどまらず、匠の知恵を生かして一から設計法づくりをやり直すべきである。
momiji.JPG

委員会のメンバー確認はこちらから
http://www.howtec.or.jp/gijyutsu/dento/dento.html
国会質問の議事録はこちらから(かなり後半のところです)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0110/main.html

各地方で独自発展をしてきた石場建て伝統構法は、統一した設計法がなじまない性格を持っています。慎重に中立公正に実験をしてほしいですが、ともかく当面建てやすくなる救済措置が必要だと感じています。

タグ:伝統構法
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コメント 10

chal

リンクを見て勉強させて頂きました。ありがとうございました。
by chal (2009-11-29 15:56) 

azusora

「伝統構法石場建て」に逆風が吹いているこの現状を、簡単に変えられるとは思いませんが、こういう議論が国単位でされるようになってきたのは大変良いことだと思います。
そして、その逆風がいつか順風満帆に変わればなぁ、と思います!
by azusora (2009-11-29 20:11) 

kido_azusa

chalさん、昔は大工さんが腕を競ってふつうに建てられていたのに、法律でどんどん縛られて、現在はがんじがらめです。面倒な現状を勉強していただいてありがとうございました。
by kido_azusa (2009-11-29 20:29) 

kido_azusa

azusoraさん、国会の答弁で石場建てが重要との認識で論議されたのは初めてだと思います。逆風も向きをひょいと変えれば順風ですからね。
by kido_azusa (2009-11-29 20:33) 

下山眞司

この論説は、東京版には載っていませんので( asahi.com にもありません)、私のブログからリンクできるようにさせていただきました。

関西の方々の方が、切実に感じているのかもしれませんね。
by 下山眞司 (2009-11-29 20:55) 

kurizo

『自然には勝てないとの考えに立ち・・・』、これはkurizoも子供のころに教えられました。その時の想いは『大工さんスゲー!』です。
今、伝統構法をあらためて見直す動き、匠の知恵を生かす動きは、非常にいいことですね。
仰る通り、当面建てやすくなる救済措置をなんとかしてほしいです。技術が廃れてしまう・・・。
by kurizo (2009-11-29 21:55) 

kido_azusa

下山さん、東京の方に特に読んでほしい記事なんですが、残念です。(asahi.comには記者の視点の記事欄はないようです)全国どこでも建てていた石場建てですので、声があがっていないところでも、うまくいけばいいという思いはあると思っています。
by kido_azusa (2009-11-29 22:18) 

kido_azusa

kurizoさん、大きな開口部をもったお寺、五重塔など昔の大工・棟梁たちの積み上げた知恵や工夫は、現代人の私たちでは想像すらできないレベルだと思います。まだ匠の知恵は残っています。次世代に是非残したいものです。
by kido_azusa (2009-11-29 22:22) 

yabonnjin

長期優良住宅の実験での倒壊の影響は無視できないでしょう
税金投入して実験する訳ですから、在来工法の再評価がなされなければ
仕分けの対象になってしまいます。
by yabonnjin (2009-11-30 12:07) 

kido_azusa

yabonnjinさん、長期優良住宅以降、金具で足下を緊結した木造住宅はだいじょうぶかなという心配があるかもしれません。足下フリーの実大実験は、文部科学省管轄で2007年2月にやっているんです。神戸波の地震でも目視での損傷はみられませんでした。肝心の国土交通省管轄では1度もやっていないんです。税金を使いながら、巧みに(?)足下フリーを避けた実験をしています。困った事態です。多額の税金をつかって足下フリーの伝統構法を排除するねらいがあるとしか思えない動きです。
by kido_azusa (2009-11-30 13:05) 

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